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更新日:2024-11-01
Level 1 ストレージを最初に学ぶ人が読む記事
第1章 ストレージの基礎

第10節 ストレージはクラウド・アプライアンス・HCI・SDS…どれがいい?

第9節はデータの通信速度とストレージの性能指標I/O・IOPS・レイテンシについて解説しました。
今回はストレージの提供形態と保守サポートについて解説します。

ストレージの基本的な提供方法

tameru_question
出板 ためる
これまでストレージはドライブによる分類と、接続方式による分類が出てきましたね。他には何があるんですか?
ストレージ博士
あとは提供方法による分類もある。
企業向けのストレージと言っても、大きな筐体にドライブが何本も入っているものだけじゃないんじゃ。
hakase

アプライアンス・ストレージ

専用の筐体で提供されるストレージ

アプライアンス
メリット
  • 専用のハードウェアで提供されるため、信頼性や性能面において優れている
  • 要件に合わせて、柔軟なチューニングやカスタマイズが可能
デメリット
  • 増設が必要な場合、機器の調達から納品、構築まで時間がかかる
  • 構築、管理において高度な知識が必要な場合が多い

SDS(Software-Defined Storage)

ソフトウェアによってサーバーの内蔵ディスクを、共有ストレージのように使用可能

SDS
メリット
  • ハードウェアは、汎用サーバーを使用することができるため、比較的安価に導入できる場合が多い
デメリット
  • 耐障害性や性能面でアプライアンスに劣る
  • 障害箇所の切り分けが難しい

クラウドストレージ

パブリッククラウドやプライベートクラウド上で提供されるストレージ

クラウドストレージ
メリット
  • 必要な時に、必要な分だけ簡単にストレージを用意できる
デメリット
  • 従量課金となるためコストの予想が立てにくい
tameru_laugh
出板 ためる
クラウドストレージは…
僕もGoogleやAppleのやつ使ってますよ!
ストレージ博士
そうじゃな、それもクラウドストレージの一種じゃ。そのイメージでいいじゃろう。
やはり近年、クラウド化の流れが強く、システム導入の際はまずクラウドを検討するという方針の企業が増えておる。
システム全体ではなくとも、例えばバックアップ先をクラウドに持っていきたいという要望も多いから、以下のような構成も増えておる。
自社のある地域で災害があったとしても、クラウドにバックアップを取っておけるなら安心じゃのう。
hakase
クラウドストレージ
tameru_question
出板 ためる
それでは今後は全てクラウドストレージになってしまうのでしょうか?
ストレージ博士
そうとは言えん。
まず1つは、「機密データをクラウドに置くことは許さない、必ず自社保有のストレージに置かなくてはいけない」というポリシーの企業もある。
他にも、メガクラウドは使った分だけ課金される従量課金が基本となるため、会計の都合でオンプレミスを選択する企業もあるじゃろうな。
hakase
tameru_idea
出板 ためる
そういえば気になっていたんですが、
第7節のオブジェクトストレージの解説でメガクラウド以外のクラウドサービスもありましたよね?それも従量課金なんでしょうか?
メガクラウド以外のクラウドオブジェクトストレージ
ストレージ博士
いいところに気づいたな。
近年、メガクラウド以外のベンダーからクラウドストレージサービスが多く登場している。Amazon S3と互換性を持ちながら、使う容量をあらかじめ予約し購入できるベンダーもあるんじゃ。
hakase
従量課金制
料金計算ツールは提供されているものの、ストレージ料金以外にイグレスコスト(APIリクエスト&ダウンロード時に発生する課金)があり、実際の料金予測が立てにくい。
ダウンロード料金がかかる
容量予約制
あらかじめ使う分の容量を予約するだけのため、料金予測が立てやすい。
ベンダーによってはイグレスコストも不要。
ダウンロード料金はかからない
あらかじめ購入した容量を超えて使用した場合や所定の回数を超えてダウンロードした場合、追加請求が発生したりサービスが停止する場合がある。
tameru_laugh
出板 ためる
ある程度料金を気にせず導入できる点は、メガクラウドにはないメリットですね!
ストレージ博士
あとは…クラウドサービス型に限らず、SDSやソフトウェア型のストレージを好きなクラウド上に構築するパターンもあるぞ。
hakase
tameru_question
出板 ためる
ハードウェア型のストレージ同様に、
好きなクラウド上に自分で自由に構築できるということですか?
ストレージ博士
そうじゃ。AWS,Azure,Googleなどのパブリッククラウド上に構築しマルチクラウド構成にするもの、プライベートクラウド上に構築するもの、オンプレとクラウドのハイブリッドクラウド構成にするもの…近年ストレージベンダーはハードウェアにとどまらず多種多様な提供形態を取っておるんじゃ。
hakase
ハイブリッドクラウド
tameru_think
出板 ためる
クラウドでも構築できるなら全部ストレージもクラウドに移行しちゃえばいいんじゃないですか?
ストレージ博士
そうもいかん。
クラウドを利用する場合、ストレージの読み書きはネットワーク回線速度が大きく影響する。本番環境やストレージの用途に応じてプラットフォームを選択しよう。

ファイル/ブロック/オブジェクトストレージの概要とおすすめ用途については第7節で触れているから、まだ記事を読んでない人はそちらもチェックしておこう。
hakase

コンバージドインフラ/HCIは構成がメーカーのお墨付き!

tameru_laugh
出板 ためる
色々なストレージがあることが分かりましたが、
接続するサーバーやスイッチは好きなものを選んでいいんでしょうか?
ストレージ博士
残念ながら、なんでもOKという訳にはいかないんじゃ。 「コンパチの確認」 って聞いたことはないかの?Compatibleの略で、「互換性がある」という意味じゃ。互換性のある構成(サーバー・OS・HBA・スイッチなど)のリストを各ストレージメーカーが提供しているので、特にFC接続の場合は必ず確認が必要じゃ。
hakase
tameru_think
出板 ためる
なんでもいいわけじゃないんですね。ちょっと面倒ですね。
ストレージ博士
さらにハードウェア的に互換性がある構成であっても、
その上に仮想化製品やアプリケーションを載せた際、
思ったように性能が出なかった…なんてこともなくはない。そんな不安を解消するのが「コンバージドインフラ」 じゃ!メーカーがしっかりと検証をして、「この構成なら大丈夫」というお墨付きの構成じゃ。
hakase
tameru_laugh
出板 ためる
メーカーが検証してくれているのは安心です!
最近「ハイパーコンバージドインフラ(HCI)」なんて言葉も
よく耳にしますが、何がハイパーなんでしょう?
ストレージ博士
ふむ。コンバージド(Converged)とは、「集中した」「収束した」という意味じゃが、ハイパーということで、さらに集中・収束したということで…
こういうことじゃ!
hakase

コンバージドインフラ

  • サーバー・ストレージ・ネットワーク・仮想化ソフトウェアなどをまとめたもの
  • メーカーが検証済みのお墨付き構成
  • ハードウェア部分は、同一メーカーで統一されているものの他に、複数メーカー製品を組み合わせたものもある
コンバージドインフラ

HCI(ハイパーコンバージドインフラ)

  • サーバー・ストレージ・ネットワークを1筐体に統合したもの(ストレージはSDSを共有ストレージとして利用)
  • 省スペース
  • 電力消費削減
  • 導入・運用が簡単
ハイパーコンバージドインフラ
tameru_tehe
出板 ためる
わっ!すごくコンパクトになった上に、機器の台数も消費電力も減って楽そうですね!じゃあこれからはもう全部HCIにしちゃえばいいんじゃないですか~?
ストレージ博士
だがしかし!
HCIでは統合されているがゆえのデメリットもある。
やはり柔軟性や性能面においては、従来型のシステムのほうが有利じゃ。
例えば、性能が足りないがストレージ容量は十分に足りている、という場合でもHCIではHCIノード丸ごと追加しなくていけない製品が多い。
hakase
従来の3Tier増設
容量だけ、CPU/メモリだけ…のように必要なリソースだけ追加可能。
3Tier増設
HCIの増設
リソースはノード単位で追加する製品が多く、性能が上がるがコストも上がる。コンポーネント単体で追加出来る製品もあるが、制限がかかっているケースが多く、3Tierの柔軟性の高さには及ばない。
HCIの増設
HCIノードの集まりをクラスタという。
ストレージ博士
また、HCIは保守についてもメリットがある。 3Tier構成は各ベンダーに問合せする必要があるが、HCIはHCIベンダー窓口一つで対応してくれるんじゃ。
hakase
従来の3Tier構成の保守
保守窓口が多岐にわたる
3Tier保守
HCIの保守
保守窓口はHCIベンダー一つで対応
HCI保守
ストレージ博士
最後にHCIのメリット・デメリットをまとめておいたから、しっかり復習しておくように。お客様が何を重視しているかによってHCIがいいのか、従来型がいいのかを判断しなくてはいかんぞ。
hakase

HCIのメリット・デメリットまとめ

メリット
  • 省スペース(2Uで環境構築が可能)
  • サーバー、ネットワーク(FC)、ストレージのサイジングが不要
  • 見積/キッティング/構築/導入が容易
  • スモールスタートが可能でスケールアウトも簡単
  • 保守窓口も一括。
デメリット
  • HCIノード丸ごと追加するため、拡張時のコストは高くなる。
  • SDSを利用しているため、ストレージ性能は高速なオールフラッシュストレージに比べて劣り、性能が求められるデータベースなどの用途には向かない。
  • 短いサイクルで定期的なパッチ適用が必要。

ストレージの新しい提供方法

レンタルリース従量課金で減価償却不要

ストレージ博士
保守やHCIの話が出たから提供方法のトレンドの話もしておこう。
最近は、ストレージ機器をレンタルリースし従量課金の提供形態も出ておる。
従来のようにストレージを複数年一括購入し、減価償却するのではなく、ストレージ(ハードウェア)をサブスクリプションでレンタルし使った分だけ支払う形がトレンドじゃ。サブスクリプション契約中であればOSの更新はもちろん、古いモデルの無料交換までサポートしてくれるメーカーもあるぞ。
hakase
従来の提供方法
(パーペチュアル)
複数年一括でストレージ(ハードウェア)の買い切り型。
モデルが古くなり、サポート対象外になったら買い直さないといけない。資産購入になるため、減価償却が必要。
買い切り型
レンタルリース&従量課金型
(サブスクリプション)
ストレージ(ハードウェア)をレンタルし、使った容量分だけ支払うサブスクリプションの従量課金型。
減価償却の対象とならないため全額経費計上となる。
サブスクリプション

減価償却とは

資産購入した場合、購入金額をそのまま経費と計上せず、購入したものの耐用年数に分けて経費計上すること。節税効果が高いので、費用の大きな固定資産を購入した時は減価償却を行った方がお得です。一方、減価償却資産として処理するには経理担当者にとっては結構手間であり、償却資産税にも影響があるデメリットもある。

減価償却
ストレージ博士
ハードウェアの交換要件など、細かいサポート内容はメーカーによって異なるからよく確認しておくように。
hakase

フルマネージドサービスはアズアサービスのように使える

ストレージ博士
また、最近はシステム管理者の負担を減らすためにメーカーによるフルマネージドサービスも提供されておる。
hakase
tameru_question
出板 ためる
フルマネージド?
メーカーが全部面倒見てくれるんでしょうか?
ストレージ博士
そうじゃ。
レンタルリース&従量課金型は導入後のシステム運用は管理者が行う必要があるが、フルマネージドは導入後のシステム運用をメーカーが請け負ってくれる。
オンプレのストレージをまるでクラウドのアズアサービスのように使いたいユーザーにメリットがあるんじゃ。
hakase
tameru_question
出板 ためる
アズアサービスってたしか、
クラウドサービスのことですよね?
一般的にIaaS、PaaS、SaaSがありますが、アズアサービスみたいにってどういうことですか?
XaaS
ストレージ博士
アズアサービスは、システムの運用・構築をクラウド事業者がクラウド上で提供するクラウドサービスじゃ。
対してメーカーによるフルマネージドサービスは、ハードウェア機器をユーザー企業のオンプレミス環境に設置しながら、システム運用に関わる構築・管理をメーカーが提供してくれるサービスじゃ。
hakase
フルマネージドサービスの対応範囲
tameru_laugh
出板 ためる
なるほど!
クラウド上で提供されないため、あくまで「アズアサービスみたい」なんですね。従来負荷となっていたインフラ管理者の工数を大きく削減できるメリットがありますね!

フルマネージドサービスのメリット

従来
システム管理者がオンプレミスの機器のファームウェアのバージョンアップ、新しいモデルの入替作業、日々のインフラ監視まで行わないといけない。
インフラ管理者がストレージを管理運用
フルマネージドサービス
メーカーがオンプレミスの機器のファームウェアのバーションアップ、新しいモデルの入替作業、日々のインフラ監視までしてくれる。インフラ管理者は他の業務に専念できる。
メーカーがストレージを管理運用
ストレージ博士
ただしフルマネージドサービスの内容は各メーカーによって異なるから、詳しくは第3章の各製品紹介ページを見てくれ。
hakase

故障に備えるストレージ保守サポート

ストレージ博士
ここまで冗長化やRAIDなど、壊れても使い続けられる仕組みを紹介してきたが、万が一壊れた場合も迅速に修理するための保守について解説しよう。
hakase
tameru_think
出板 ためる
保守かあ…
実は先日ストレージの見積をもらったんですが、機器とは別に「オンサイト保守」の費用が記載されていて、それが結構高いなーって。
家電につけられる「●年間保証」みたいなものですか?
ストレージ博士
「オンサイト保守」というのは、「オンサイト=現場・その場所」という意味があるように、保守員が現地に来て、届いた部品を使って修理をしてくれるんじゃ。
下記のように、色々な保守サービスがあるが、オンサイト保守は人が来てくれる分、他とくらべると少々高価な場合が多いかのう。メーカーや製品によって選択できる保守は異なるので注意が必要じゃよ。
hakase

オンサイト保守

機器の設置先に保守員が駆けつけて対応

オンサイト保守

センドバック保守

メーカーや保守会社が交換用部品を送付し、故障品を送り返す

(自身で交換対応が必要)
センドバック保守

リモート保守

インターネット経由で障害対応を実施

(インターネットに接続できない機器の場合は利用できない)
リモート保守
tameru_tehe
出板 ためる
ま、良いものはその分高いってことですね。
でもプロが駆けつけて対応してくれるなら、安心ですね。

平日保守と24時間365日保守、どっちがいい?

tameru_question
出板 ためる
ところで、壊れたら保守会社に連絡すればいいんですか?
ストレージ博士
そうじゃな、メーカーや契約内容について異なる場合もあるが、基本的には電話やメール、専用のWeb等から連絡するのが一般的じゃ。 機器が障害を検知したら自動で保守会社や、管理者など任意の宛先に通知を飛ばす仕組みをもったストレージもあるぞ。
hakase
tameru_laugh
出板 ためる
それは安心ですね!
見積に平日9-17時保守と24時間365日保守の2つの費用が載っていますが、これは対応時間ということですか?
御見積書
ストレージ博士
そうじゃ。見たまんまじゃが、平日(月~金)の9-17時だけ対応してくれる契約と、平日以外の土日祝も含んだ365日、24時間中対応してくれる契約のことじゃ。オンサイト保守は大体この2パターンを提供しているメーカー・保守会社が多い。
ストレージに障害が発生した場合、1分1秒でも早く復旧させる必要がある場合は24時間365日保守を契約する必要があるが、その分平日保守より金額も高い。
例えば、バックアップ用途で使用しているなど、そこまで急いで復旧せずとも大丈夫という場合であれば、平日保守を選択して抑えるのも手じゃ。
hakase
保守選択例
ストレージ博士
ちなみに平日保守と一言で言っても、受付時間や対応時間は、メーカーや保守会社によって様々なので、必ず保守の仕様書を確認しておくようにしよう。
hakase
tameru_laugh
出板 ためる
保守仕様書に、詳細な対応時間や条件が記載されているんですね。
必ず確認して、お客さんの要件に合う保守を提案するようにします!

今回はストレージの提供形態とストレージの保守を解説しました。
HWのアプライアンス型だけでなくクラウド、HCI、SDS、フルマネージドサービスまで多様な選択肢をストレージメーカー各社は用意しています。性能や耐久性だけでなく、ユーザー企業の管理・運用方法も考慮し適切なストレージを選択しましょう。
次回はいよいよ第2章「ストレージ機能編」です。まずは基本のスナップショット・レプリケーションから学びましょう。

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