そもそも、なぜHCIは既存の仮想基盤の課題を解決できるのでしょうか。チャプター1と重複する部分もありますが、復習も兼ねておさらいしていきましょう。


ここ10~20年で仮想化技術は大きく発展し、ITシステムの在り方に大きな変化をもたらしました。サーバーやストレージなどの物理的に存在するハードウェアを、仮想化されたシステムではコンピュートリソースとして扱い、物理的には存在しない「仮想マシン(VM)」としてサーバーを稼働させました。これにより、リソースの効率的な活用ができ、ハードウェアの初期投資コストを抑え、電力やスペース面においても運用メリットも生まれています。


一方で、黎明期に採用されたネットワークスイッチ、サーバー、SANスイッチ+SANストレージの3層インフラストラクチャーによる仮想化基盤は、それぞれのハードウェアが独自の”職人“を必要とするシステムになっています。

そのような課題を解決したHCIでは、ハードウェアはサーバーと、それらを纏めるネットワークスイッチで構成され、非常にシンプルな構成を取ることができます。サーバー上で稼働するHCIソフトウェアは、ソフトウェアの中で仮想的なネットワークスイッチ(SDN: Software Defined Network)サーバーのディスク(HDD/SSD)をソフトウェアの力で論理的なストレージ領域(SDS: Software Defined Storage)として活用し、専用ストレージは不要となりました。

また、長期のシステム運用で避けては通れないのがシステムの拡張です。HCIではサーバーの増設により容易にスケールアウトすることが可能で、この点もHCIが注目される理由となっています。