導入事例 株式会社NTTデータ
統合開発クラウドのインフラ自動化に「Puppet Enterprise」を活用
開発生産性の向上に大きく貢献
- Puppet
2017.09.26
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創業: 1988年5月23日
資本金: 1425億2000万円
U R L : http://www.nttdata.com/jp/ja/
業種 : 情報サービス業
事業概要: システムインテグレーション事業や多彩なITサービスを展開するNTTグループ企業
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導入前までの経緯
- ビジネスのデジタル化などにも対応できる先進的な開発体制を築き上げること
- ハードウェア/ソフトウェア調達や環境構築などの準備期間を短縮すること
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導入後期待される効果
- 「統合開発クラウド」を構築し、システム開発の生産性、俊敏性向上を実現
- Puppet Enterpriseによる自動化を実施し、多様な開発環境を短時間で提供
プロジェクトメンバー
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株式会社NTTデータ
技術革新統括本部
システム技術本部
方式技術部
企画推進担当
課長代理
菅原 亮 氏
「Global IT Innovator」のグループビジョンの下、金融、公共、社会インフラ、製造、流通、教育など、幅広い分野にわたるITソリューションを展開するNTTデータ。国内最大級のシステムインテグレーターとして知られる同社では、顧客企業の課題解決に貢献すべく様々な取り組みを展開している。
その一つが、2017年4月より運用を開始した「統合開発クラウド」だ。ビジネスを支える企業情報システムには、各種の業務をしっかりと下支えする信頼性や堅牢性が欠かせない。しかし近年では、最新のデジタル技術を駆使して新たな価値創出を目指す動きも一段と高まっている。こうした異なる要求を高いレベルで両立し、開発業務の生産性と俊敏性をさらに向上させていくことが、統合開発クラウドの狙いだ。
「加えて統合開発クラウドは、社内の働き方改革を後押しする重要な役割も担っています」と話すのは、同社 技術革新統括本部 システム技術本部 方式技術部 企画推進担当 課長代理の菅原 亮氏。同社の開発案件には高い機密性が求められるものも多く、従来はどうしても出社して開発業務を行わざるをえなかった。しかし、統合開発クラウドを利用すれば、社内の開発環境に安全にアクセスすることが可能。これまでは困難だった開発エンジニアの在宅勤務なども可能になる。
今回構築された統合開発クラウドでは、アプリケーション開発機能の集約やプロジェクト管理機能の組み込み、マルチベンダー/マルチクラウド対応など、様々な試みが行われている。中でも注目されるのが、開発業務に用いるITインフラ構築の自動化を推進している点だ。 菅原氏はその背景を「当社では膨大な数の開発プロジェクトが常時動いていますが、従来は機材の手配や環境構築などを、それぞれのプロジェクトで個別に行っていました。最近ではシステムの複雑化・大規模化が進んでいますので、開発環境やテスト環境を用意するだけでも多くの時間がかかります。その点、インフラの自動化を推進すれば、このようなプロセスを丸ごとカットすることができ、ハードウェアやソフトウェアの製品調達を含めたシステム基盤の構築期間を、大幅に短縮することができます。しかもツールを利用することで、人為的な設定ミスによるトラブルなども防止できます」と説明する。
そのための製品として新たに採用されたのが、ネットワールドが提供するサーバー/スイッチ設定自動化ツール「Puppet Enterprise」である。Puppet Enterprise は「マニフェスト」と呼ばれる定義ファイルを作成することで、各種の設定作業などを自動的に実行。開発エンジニアが必要とする環境を、極めてスピーディに提供することができる。
「今回Puppet Enterpriseを採用した理由は、そのシンプルさ、分かりやすさにあります。Puppet Enterpriseのマニフェストは、シェルスクリプトが書ける人ならすぐに使えるくらい簡単です。プログラミングのスキルを持たないインフラ担当者でも容易に扱える敷居の低さは、我々にとって大きな魅力でしたね」と菅原氏は語る。
もちろん、応用範囲の広さという面では、プログラミング言語を使用する自動化ツールの方が有利な面もある。しかし、この場合は担当者の能力によって仕上がりに大きな差が出てしまう上に、通常のソフトウェア開発と同じような検証・テスト作業も必要になってしまう。「開発生産性の向上が目的なのに、新たな負担を抱え込むのでは本末転倒。統合開発クラウドへの適用という目的を考えれば、何でもできるということが、必ずしもメリットにはならないのです」と菅原氏は続ける。
Puppetにはオープンソース・ソフトウェア(OSS)版も存在するが、今回同社では、サポート付きのEnterprise版を採用している。菅原氏はその理由を「統合開発クラウドでは、様々な構成の開発環境を提供する必要があります。OSS版の場合には、これらに用いられるミドルウェアなどを全て自分たちで試した上で、マニフェストを作り込まなくてはなりません。その点、Puppet社では、様々なDB/ミドルウェアに対応した品質担保済みモジュールを『Puppet Forge』というサイト上で公開しており、Enterprise版のユーザーであればこれらのモジュールを自由に利用できます。これにより、それぞれの開発プロジェクト向けの環境を効率よく用意できるというわけです」と説明する。
もっとも、モジュールの組み合わせ自体も相当な数に上るため、現在は十数パターンの組み合わせをリファレンスとして提供しているとのこと。たとえばWeb三層システムの要求があれば、Apache、Tomcat、PostgreSQL用の各モジュールを組み合わせて仮想サーバーをデプロイするといった具合だ。
「さらに次期リリースでは、こうした作業を開発エンジニア自身がセルフサービスで行える環境も提供する予定です。現時点では我々の方で対応していますが、これだと開発側で減った負荷がこちらに集中してしまいます。これをセルフサービス化することで、全社的な効率化とスピードアップを図っていきたい」と菅原氏は語る。
Puppet Enterprise を導入したことで、開発業務にも大きな変化が生まれている。「機材手配や環境構築の作業が無くなったことで、準備に要する期間は大幅に短縮。これまで2~3ヶ月掛かっていた作業を、1日で済ませることも可能です」と菅原氏は力強く語る。
現場の開発エンジニアからも、歓迎の声が上がっているとのこと。たとえばテスト工程では、システムの動作や品質を確認するための検証環境を頻繁に使用する。「検証はクリーンな環境で行う必要がある」(菅原氏)ため、一度使用した環境で再度テストを行う際には、バックアップファイルなどを利用して初期状態に復元する必要があった。
「現在ではこうした作業も短時間で済むため、より付加価値の高い業務に注力できるようになりました。また、ビッグデータやIoT、AIなどの大量のリソースを必要とする分野でも、大きな効果が発揮できると考えています」と続ける。
今後は社内や協力会社での利用をさらに拡大していくほか、海外子会社などへのグローバル展開も推進していく。いわばこれからが本番となるだけに、ITパートナーであるネットワールドにも大きな期待が寄せられている。「統合開発クラウドの普及促進に向けては、サービス・サポート体制の強化も重要なポイントになります。そうした面でも、ネットワールドには引き続き強力な支援をお願いしたいですね」と菅原氏は語った。