重い扉を開けると、城の中は薄暗い闇に包まれていた。少し警戒しながら、サトルは一歩、また一歩と前に進んだ。すると、城内を進むごとに徐々に明るくなってきた。
しばらく歩くと、きらびやかな扉の前に着く。一度深呼吸をして扉を開けると、その部屋には大勢のクジラのような姿をした人々がいた。皆、拍手と笑顔でサトルとディアを出迎えてくれる。
一番奥には玉座があり、見覚えのある老人が座っている。最初に港で会った、あの老クジラだ。その頭にはまばゆい光を放つ王冠を付けている。
「え、何なんだ、これ?」、この世界で目覚めた時と同じくらい呆然としていると、老クジラがこちらに歩み寄り、サトル、ここまでの旅路は楽しかったかい?」と声を掛けてきた。
「はあ……」とこれまた曖昧な返答しかできなかったが、すかさず老クジラが部屋中に響き渡るくらいの大音量で笑い声を上げた。
「よかった、よかった。これで君もコンテナ王国の一員だ。あちらの世界から来たときは、コンテナに関する知識のなさに逆に驚いたもんだが、立派に成長したのぉ」とねぎらいの言葉をくれた。さらに「どうじゃ、すっかり自信はついたのではないかのぉ」と問いかけてくる。
「この世界で多くのことを学びました。でも、まだ基本的なことに過ぎないと思います。ようやくスタートラインに立てた感じですね。もっともっと、コンテナについて知りたいし、学んでいきたいです」。普段はお調子者な自分だが、本心から出た言葉だった。
それを聞いた老クジラは微笑みながら「今後は具体的にどうしたいのじゃ?」と尋ねてきた。
「今、ビジネスに必要なのは『スピード』です。コンテナやKubernetes、マイクロサービス、クラウドネイティブなどは、ビジネスのスピードを向上させるために必要な新しい技術だと思います。ただ、単に技術を取り入れただけでは、お客様の課題を解決することは到底かないません」と答えた。
「では、どうするのじゃ?」と老クジラに問いかけられ、僕は力強く答えた。
「自分が配属された異動先の部署では、コンテナ・Kubernetes関連のさまざまな製品やソリューションをお客様にご提案しています。関連用語やサービスが多く、難解な技術分野ですが、お客様へ解りやすいベストな提案を行い、ビジネスを支援できるように頑張りたいです!」
すると、老クジラは「真面目か!」と言いながら、突然、ハリセンを持ち出して僕の頭を叩いてきた。思わぬ衝撃で気を失ってしまった。
……しばらくして目が覚めると、自社オフィスの席の前にいた。
「元の世界に戻ってきたんだ……、それにしても不思議な出来事だったなぁ」と考えていると、「サトル君、ぼっとしてないで、これからこれからお客様とのウェブ会議だぞ!」と遠くから先輩の声が聞こえる。
「いっちょ、やったるか!」気合を入れて席を立ち、モバイルPCを片手に急ぎ先輩の方へ駆け寄っていった。
「コンテナ王国」に転移したサトルはその後、異世界で学んだことを活かし、ネットワールドのクラウドネイティブな製品やソリューションを活用し、お客様それぞれの課題解決を支援する主力メンバーとして活躍することになりました。それは、また別の物語でお話ししましょう。