オブジェクトストレージへのデータ保存
パプリッククラウドをバックアップ先として利用する場合から見ていこう。
オンプレミス側からクラウド側へデータをバックアップする際に考えるポイントは3つじゃ。
AWSではS3、AzureではBlobと呼ばれるオブジェクトストレージにデータを保存する際、
以下のいずれかの形式や用途で保存している。
①バックアップデータをそのまま保存 (フォーマット未変換)
②DRサイトをクラウドに構築 (フォーマット変換)
③アーカイブデータとしてクラウドに保存
❶バックアップデータをそのまま
 保存(フォーマット未変換)
❷DRサイトをクラウドに構築
 (フォーマット変換)
❸アーカイブデータとして
 クラウドに保存
博士、なぜクラウド上への保存先はオブジェクトストレージなんですか?
オブジェクトストレージ以外に保存はできないんでしょうか?
うん、いいところに気づいたな。
前にも伝えたようにクラウドにはいろんなサービスがある。そのいろいろあるサービスの中で、ストレージサービスとして最も有名なのがAWSならS3(Amazon Simple Storage Service)、AzureならBlob Storageじゃ。それ以外にもデータを保管するサービスとしてAWSにはEBS(Amazon Elastic Block Store)、EFS(Amazon Elastic File System)がある。Azureにはマネージドディスク※と言われるサービスがある。
※マネージドディスク… https://azure.microsoft.com/ja-jp/services/storage/disks/
ただしバックアップデータの保存にオブジェクトストレージを利用する決定的な理由がある。それは値段じゃ。
いくらクラウドが便利でもコストもそれなりに安くなければ、利用する価値がない。
例えばS3の例で考えると次のように非常にコストメリットがある。
2020年6月現在で最初の50TBまで0.025USD/GBでざっくり1ドル=¥100で計算すれば¥2.5/GBである。価格.comで2020年6月現在コンシューマー向けの4TBのHDDが¥8000前後(¥2.0/GB)で販売されているので、それと比較しても少し高いレベルである。非常に堅牢性も高く、データの管理もしてくれて色んなサービスと連携できるので、これを利用しない手はない。
製品
$0.025/GB 参考価格 ¥8,000
¥2.5/GB 1GBにかかるコスト ¥2.0/GB
さらにアーカイブ用途として、データ保存後はほぼ利用せずコンプライアンス的に保管する必要のあるデータなどはAmazon S3 Glacier Deep Archiveと言う更にコストメリットのあるサービスに移すことも可能である。
このことから初期にデータを保存するために、高価なエンタープライズ向けのストレージ機器をいきなり購入するより、必要な容量分だけを借りる事ができるために初期投資を減らす事ができる。
従来のストレージ
クラウドのオブジェクトストレージ
また、機器を購入した場合には通常5年で機器を減価償却するために資産となり、全額経費として計上できないが、クラウドであれば減価償却対象とならないため全額経費として計上できるメリットもある。
減価償却とは
資産購入した場合、購入金額をそのまま経費として計上せず、購入したものの耐用年数に分けて経費計上すること。
節税効果が高いため、費用の大きな固定資産を購入した時は減価償却を行った方がお得。
一方、減価償却資産として処理するには経理担当者にとっては結構手間であり、償却資産税にも影響があるデメリットもある。
ただし注意点としてS3などのオブジェクトストレージは通常データをダウンロードや機能をリクエストする時(今回の想定で言えばバックアップデータを復元する時)には、別途データ利用料金が発生するので注意しなければならない。
え〜、じゃあ怖くて利用できないじゃないですか?
そこまで利用料金が高いわけではないので、一応考えとして持っておくレベルでよい。
ちなみにダウンロード料金は2020年7月時点で9.999 TB/月までは0.114USD/GBだから¥11/GB程度じゃ。月に転送するデータの総量やサービスを提供するリージョンなどによっても異なるので詳細はAWSのサイトで調べてほしい。検索サイトで「AWS S3 料金」などで検索すればすぐに出てくるぞ。
そうなんですね。安心しました。
通常のバックアップ用途で、毎月たくさんのデータをリストアすることは考えにくい。ただし、バックアップデータを開発等で再利用するなど、大量の保存バックアップデータを再利用(ダウンロード)しなければならない場合などは気をつけた方がいい。
このような観点からもデータ復旧の際はファイル単位など、出来るだけ細かい単位でリストアできる製品を選択することも重要になるんじゃ。 1つのファイルをリストアしたいだけなのにボリューム丸ごとダウンロードしてから、1つのファイルをリストアして取り出すのは非効率じゃ。
ボリューム単位でリストア
必要以上にダウンロード料金がかかってしまう…
ファイル単位でリストア
必要な分のみダウンロード料金を抑えられる!
他にも、コスト面で注意が必要なのは、クラウドをDRサイトとして利用する場合じゃ。
クラウド上のバックアップサーバーの起動とシャットダウンを制御できるかなど、
バックアップソフト側の機能を確認する必要がある。
もう少し詳しく教えてください。
よかろう。
前回の 「バックアップを最初に学ぶ人が読む冊子!」 の復習じゃ。
例えば有事にクラウド側でDRサイトを立ち上げるためには、事前に各クラウドのファイルフォーマット形式に合わせて保存しておかなければならない。AWSであればAMI、AzureであればVHD形式じゃ。ここまでは理解しておるな?
はいもちろんです。前回やりましたからね。
物理環境のフォーマットのままクラウドにバックアップした場合と、あらかじめクラウドの
フォーマットに変換してバックアップした場合を図で説明するとこんな感じですよね。
物理環境のフォーマットのまま
バックアップ
そのままバックアップすると変換の手間は省けるがリストアするときには一度バックアップサーバーでイメージを復元して使わなければいけない。つまりクラウド環境にバックアップサーバーがない場合には一度ダウンロードして復元するなど、利用したいときに即座に利用できない可能性がある。
クラウドのフォーマットへ
変換してバックアップ
各クラウド環境に合わせてイメージをバックアップした場合には、クラウド上では仮想サーバーとしていつでもすぐに起動できる状態。つまり災害時に即時利用できたりするなどいろんなメリットがある。つまりバックアップを利用するときのことを考えて事前に準備している。
そうじゃ。その通り。
そしてここで問題になるのがクラウド側にデータを送った際にデータの形式をAMIに変換したり、有事の際にデータをマウントして起動をするなどの管理をするメディアサーバーが、電源がONのままではなく、必要な時だけ起動できるかどうかが重要じゃ。
どうして電源管理が重要なんですか?
サーバー関係は基本電源を落とさないほうがいいと新人研修で習いました。
確かにサーバー類は電源を落とさないほうがいいという考え方もある。
ただしクラウドになると少し話は変わってくる。何故ならクラウド上のサーバー(EC2)などは起動している時間で課金をされるからじゃ。だからDRサイトなど常時使わないサイトの電源はコスト削減のために出来れば落としておきたい。その為、電源管理がバックアップソフト側で制御できるかも重要な商品選定のポイントじゃ。
Amazonの場合、
EC2上に起動するサーバーのことをInstanceと言うよ。
また少し変わった使い方としてバックアップ対象から、直接クラウド側にバックアップをしたいという顧客の要望が増えている。
えっ!つまりオンプレミスのバックアップサーバーを
介さないということですか?
通常の構成
クラウドダイレクト構成
そうじゃ。大分理解してきたようじゃな。
でもそれってなぜですか?
理由は 環境の変化 じゃ。
今はリモートワークが増えたり、監視カメラなどもどんどん増えている。
例えばリモートワークの場合には沢山の社外にあるPCからわざわざ社内にあるバックアップサーバーにVPN越しでバックアップをしてからクラウドに転送すると、それだけでネットワークが混んでしまう。監視カメラについても同じじゃ。直接クラウド側に送れるものは、直接クラウドへ転送したほうがネットワークの負荷などを考えると圧倒的にメリットが大きい。
本社バックアップサーバーをVPNで経由してクラウドへ転送する構成
直接クラウドへデータを転送する構成
これについてはライセンスについても確認した方がよい。
沢山のPCや監視カメラそれぞれにライセンス料金がかかると莫大なコストになってしまう。
よってバックアップ対象数ではなく、バックアップ容量課金であるかどうかも重要である。

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