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更新日:2024-11-01
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第3章 SaaSバックアップ編

クラウド化が進み、Microsoft 365やSalesforceなどのSaaSが鉄板のビジネスツールとなっています。
便利すぎるあまり、すべてSaaSベンダー任せにしていませんか?
実はあなたがSaaS上で扱うすべてのデータ、不慮の事故や悪意ある操作で消えても「利用者責任」なんです。
万が一の最悪な事態に備えて、SaaSの実態と取るべき対策を押さえておきましょう!

  1. SaaSバックアップとは?
    1. そもそもSaaSとは何か?メリット・デメリットを押さえよ
    2. SaaSをバックアップするってどういうこと?
    3. 「SaaS側でバックアップされてるはず」という勘違いの裏に潜む大きなリスク
  2. SaaSの責任共有モデル「SaaS上のデータは利用者責任」
  3. SaaSのバックアップがなんで必要なの?
    1. Microsoft側で行う災害対策「レプリケーション」の落とし穴
    2. 内部脅威/セキュリティ侵害/人的ミスのデータ損失は利用者責任!
  4. SaaSベンダーが提供するバックアップ機能じゃダメなの?
  5. 製品選定ポイント① 対応範囲
    1. Teamsの構造知ってる?データ保存先が機能によってバラバラなんです
    2. Teamsのリストアは課題がいっぱい
  6. 製品選定ポイント② バックアップの保存先
    1. パブリッククラウド/バックアップベンダー提供の独自クラウドのメリット・デメリット
    2. バックアップとアーカイブの違い
  7. 製品選定ポイント③ 構築コスト
    1. 最近増えているBaaSは、SaaS型のバックアップサービス
    2. 簡単に管理するために必要なポイント
  8. 製品選定ポイント④ リカバリ/リストア機能
    1. データ丸ごと/アイテム単位、どっちで復元する?
    2. リストア権限者はユーザー自身?管理者に限定?
    3. データを復旧する際の検索機能
  9. 製品選定ポイント⑤ ライセンス体系

SaaSバックアップとは?

バックアップ博士
さて、
ここからは第2章『SaaSバックアップ編』のスタートじゃ。
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城宝 守
新たなステージの幕開けですね!やる気がみなぎります。

そもそもSaaSとは何か?メリット・デメリットを押さえよう

バックアップ博士
ほう。
では守くん、まずはSaaSとはなにか、説明しておくれ。
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城宝 守
はい!
SaaSとは“Software as a Service”の略で、「サース」または「サーズ」と呼びます。 ベンダーが提供するクラウドサーバーにあるソフトウェアを、インターネット経由でユーザーが利用できるサービスです。
バックアップ博士
ふむ。
たとえばどんな製品があるかのう?
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城宝 守
最もよく知られているのが、Microsoftが提供する『Microsoft 365』です!
ほかにも、ストレージの『Google ドライブ』『Box』、顧客管理(CRM)製品で高い人気を誇る『Salesforce』、あとはコミュニケーションツールとして急速に普及した『Slack』などがあります。
soft
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城宝 守
SaaSは、こちらで環境を構築しなくとも、企業やユーザーが簡単にサービスを利用開始できるのがメリットですね!逆に、カスタマイズができないのはちょっとネックです。

SaaS

saas
saas2
内容
メリット
  • 構築開発不要ですぐにサービス開始できる。
  • システムのトラブルは全てSaaS提供元に任せられる。
デメリット
  • サービスを自由にカスタマイズできないため、サービスに合わせて事業を運用する必要がある。
バックアップ博士
うむ、よくできたぞ。
SaaSの詳しい説明は『バックアップを少し学んだ人が見るサイト!vol.2』(SaaS)にもあるから、ぜひチェックしておくように。
さて、では“SaaSバックアップ”とは何じゃろうか?
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SaaSをバックアップするってどういうこと?

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城宝 守
えっ…と、
SaaSで生成されたデータの保護や、安全に復旧するための仕組み…ですかね。
バックアップ博士
では、守くんはSaaSデータのバックアップを考えたことはあるかのう?
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城宝 守
うっ…
あ、ありません。
バックアップ博士
こんなに仕事で活用しているのに?
ZoomTeamsだって使っておるじゃろう?もしかしたらOneDriveSharePointなんかも、ファイルサーバー的に使っているかもしれんのう。
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城宝 守
なぜ弊社のSaaS利用状況を…!
そのとおりです。考えてみたら、いろいろなシーンでSaaSを活用しているのに、そこにあるデータのバックアップは考えたことがありませんでした…
というか今でもSaaSベンダーがバックアップを取ってくれていると信じています。
ただその質問をされたということは・・・
バックアップ博士
そこなんじゃ。
管理者の中には「SaaSベンダーのDRサイトでデータが複製されているから大丈夫」など、SaaS側でデータを完全に保護してくれるものだと勘違いしている管理者が多いんじゃ。
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saasbackup
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城宝 守
やっぱり、そうだったんですね。
で、なぜSaaSベンダーのDRサイトで行うデータ複製ではダメなんでしょうか?

「SaaS側でバックアップされてるはず」という勘違いの裏に潜む大きなリスク

バックアップ博士
近年、特にリモートワーク推進や働き方が変わった影響で、SaaSの在り方が一変し、多くの企業でSaaSが利用されることとなった。と同時に、セキュリティの脅威にさらされるようになったり、気軽に利用できるからこそのチャットでハラスメントの弊害が発生したりするなど、多数の問題が生じておる。そして故意に削除したデータがうまく戻らない事象も発生している。そのため、SaaSデータのバックアップが今、急激に注目されておるんじゃ。
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セキュリティの脅威
risk1
チャットでのハラスメント
risk2
リストア失敗
risk3
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城宝 守
SaaSが流行っているからこそ、ちゃんとバックアップできるかが大切ってことですね…!
ちゃんと学ばなきゃ!

SaaSの責任共有モデル「SaaS上のデータは利用者責任」

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城宝 守
でも博士。
やはりバックアップを取得するのは、こちら側でやるべきなんですか?なんかわからないけど、なんとなく「こんなに便利なんだから、ついでにバックアップもサービス提供者側でやっちゃってよ」って正直思っちゃうんですが…
work
バックアップ博士
ちゃんとSaaSの利用規約を読んでいないようじゃな。
基本的に、多くのSaaS提供ベンダーでは、利用規約に『責任共有モデル』を制定しているぞ。
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城宝 守
責任共有モデル…ですか?
バックアップ博士
つまりSaaSは、
“データ保護は『SaaS提供者』と『SaaS利用者』で分担して行いましょう”という考えに基づいて運用されている、ということじゃ。
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responsibility
バックアップ博士
あくまでベンダーはプラットフォーム障害、つまり『インフラ障害』『アプリの不具合』、あるいは『災害による障害』における場合のみに責任を負っている。なぜなら、サービスの“提供” こそが、主たる存在意義だからじゃ。

一方SaaS利用者は、サービスを“利用した先” に、存在意義がある。そのため、SaaS利用で生じたデータを守るのはSaaS利用者であるべきなんじゃ。共有責任モデルは、たとえばMicrosoftの利用規約などにも記載があるぞ。
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SaaSの責任共有モデル(保護範囲)
protection_range1
protection_range2
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城宝 守
そうだったんだ…
SaaSベンダーは、作った器(システム)に対しては責任を持つけど、器に盛るもの(作成データ)の責任までは負えないということですね。
ベンダーはキッチンや調理器具を提供
vendor1
作った料理はあくまでユーザーの責任
vendor2
バックアップ博士
生成したものは、ちゃんと自分たちで責任をもって面倒見るべき、ということじゃな。
そしてSaaSアプリケーションおよびそのデータを、安全にバックアップできるかどうかが、第2章のテーマである『SaaSバックアップ』ということじゃ。
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SaaSのバックアップがなんで必要なの?

Microsoft側で行う災害対策「レプリケーション」の落とし穴

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城宝 守
でも博士、
いくらなんでもデータセンターでは災害対策はきっちり管理されているんじゃないですか?
サービスを提供する側としては、手厚くサポートしたほうが絶対喜ばれるんだし…ユーザーのメリット を提供すれば、より顧客も増えるじゃないですか。
バックアップ博士
うむ。
たとえばMicrosoftでは、もちろんなにかあったときのための冗長性を担保する仕組みとして、データセンター間でレプリケーションが日々行われているぞ。
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城宝 守
じゃあやっぱり、
こちらでバックアップを取得する必要はないんじゃ…
バックアップ博士
まだまだ甘いのう、守くん。
Microsoftで行われているのは、バックアップではなく、あくまでレプリケーションじゃ。
データセンターでレプリケーションされたデータがなんらかの原因で破損していたとしたら、どうなると思う?
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replication
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城宝 守
あっ
破損したデータがそのまま復元されてしまうってことか!
replication2
バックアップ博士
そういうことじゃ。
ほかにも、サーバー事業を展開するフランスのある企業がもっていたデータセンターが、火災で焼失した事件がある。この事件によって、.frドメイン(フランスの国別ドメイン)のデータの内、およそ2%が失われたが、そのデータは復元できないとされている。
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replication3
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城宝 守
レプリケーションもされていないベンダーもあるってことですね…

内部脅威/セキュリティ侵害/人的ミスのデータ損失は利用者責任!

バックアップ博士
利用者が急増する中で、サポートがまだ十分に回っていないケースは当然あるじゃろう。ほかにも、Microsoft 365のアカウントが乗っ取られたり、Teamsを通じてランサムウェアによる暗号化がなされてしまったりしたケースもある。
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城宝 守
Microsoftのサービスでも…
いや、利用者が多いMicrosoftのサービスだからこそ狙われやすいのか…
バックアップ博士
責任共有モデルで考えると、悪意あるデータ削除などの『内部脅威』、ランサムウェアなどによる『セキュリティ侵害』、操作ミスにより誤削除や上書きなどといった『人的ミス』に対する責任は、利用者が負わなければならない。さらにはフランスの火災事例でいうと、もはや災害対策などにおけるインフラレベルのデータ保護も安心できない、ということがわかる。
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miss
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城宝 守
ひええ、
全然安心できないや…

SaaSベンダーが提供するバックアップ機能じゃだめなの?

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城宝 守
博士…
Microsoft 365のE3/E5といったエンタープライズ向けのライセンスなら、バックアップの仕組みもあるのでは…?
バックアップ博士
残念ながら、
Microsoft 365でもバックアップ機能はないのじゃ。
たとえば、『機密度ラベル』というファイルやメールに個別でラベルを設定できる機能や、条件付きでMicrosoft 365にアクセスできるようなコンプライアンス機能はあるがのう。“データを保存してくれないのは当たり前”と考えるべきじゃな。

ほかにもしばしば話題に上がるのが、SaaSベンダー自体が提供するバックアップ機能じゃ。
ベンダーによっては計画の中止・延期破綻を繰り返しており、ロードマップにはあるものの提供がいつかわからないというのが現状じゃな。現時点でもバックアップとリストアの手段はあるものの、細かい単位での世代管理などができなかったり、リストア手順が複雑だったりするなど実用性は正直低いといえる。
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practicality
バックアップ博士
そもそも、
バックアップデータが同じクラウド内にあるのは望ましくないしのう。
やはりバックアップは簡単なようで奥が深く、SaaSベンダー自体も苦労しているようじゃ。
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城宝 守
なるほど。
第1章で学んだ3-2-1ルールの考え的にも、バックアップは同じ環境に保存すべきではないですしね。

製品選定ポイント① 対応範囲

バックアップ博士
さて、
いよいよ製品選定ポイントを見ていこう。
まず大事なのは、どこまで対応できるか、『対応可能なSaaSサービスの範囲』じゃ。
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城宝 守
あれ、でも博士。
つまりはどれだけサードパーティと連携できるかってことですよね?
基本的にはAPIを叩くだけだから、どのベンダーも変わりがないんじゃ…
バックアップ博士
ふむ。
いよいよ製品選定ポイントを見ていこう。
『API連携をとるだけと思うなかれ』じゃ。機能実装範囲も異なれば、保存先・保存方法も異なる。つまり、強引に言うならば、『機能をどれだけ多く実装しているか』がシンプルに差別化要素となる。
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城宝 守
ということは、
ベンダーの技術力や対応力の速さがそのまま対応範囲の差になるってことですね。
バックアップ博士
今後SaaSバックアップが進むにつれて、公開されたAPIよりバックアップを取得する仕組みから最終的には各社機能は横並びになることが予想される。
ただし、バックアップを取るべき状況は変わり続けるし、アプリケーション自体も進化するので、横並びになるのがいつかはわからないといえる。
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run
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城宝 守
コストを考えて、
まずは自社に必要な分だけの範囲を完璧にできればよいわけですね!
バックアップ博士
そのとおり。
ただし、Microsoft 365はほかのSaaSバックアップと状況が違う。
いろいろなアプリケーションの複合製品だからじゃ。Microsoft 365を単体として見るのではなく、それぞれのアプリに対してどの程度までバックアップできるかを考慮しなければならないのじゃ。

利用者の圧倒的な多さからも、基本Microsoft 365バックアップをメインのSaaSバックアップサービスとして提供するベンダーも多い。
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バックアップベンダーのSaaSサポート状況(イメージ)

support

※バックアップベンダー各社の最新対応比較表は冊子PDF版をお申込みください。

Microsoft 365の基本サービス
(Microsoft 365 Business Standard)

office
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城宝 守
SharePoint、OneDrive、Exchange、Teams…
Microsoft 365で企業がよく使うアプリケーションも、ざっと思いつくだけでこれだけありますもんね。

Teamsの構造知ってる?データ保存先が機能によってバラバラなんです

バックアップ博士
Microsoft 365というUIで統合されているだけで、元はバラバラなアプリケーションというのが抑えるべきポイントじゃな。 さらに複雑にさせるのが、Teamsがインターフェースとなっているものの、裏でSharePointなどが動いているパターンも多い点じゃ。
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Teamsの構造

teams
Teams機能データの内容保存先
チャット
チャット
チャット会議のレコーディング OneDrive(ユーザー)
チャット/会議 Exchange Online(ユーザー)
チャット/会議 OneDrive(ユーザー)
Exchange Online(ユーザー)
標準チャネル
標準チャネル
チャネル会議のレコーディング SharePoint Online
チャット/投稿/会話 Exchange Online(ユーザー)
チャネルのカレンダー Exchange Online(ユーザー)
チャットで送信されたファイル SharePoint Online
[ファイル]タブを使用してアップロード
されたファイル/フォルダ
SharePoint Online
プライベート
チャネル
プライベートチャネル
チャネル会議のレコーディング SharePoint Online
チャット/投稿/会話 Exchange Online(ユーザー)
チャットで送信されたファイル Exchange Online(ユーザー)
SharePoint Online
[ファイル]タブを使用してアップロード
されたファイル/フォルダ
SharePoint Online
参考:https://insights-jp.arcserve.com/teams-backup
バックアップ博士
Teamsは仕組み自体が複雑だから、そもそも個人チャットは容易にバックアップが取得できないんじゃ。どうしてもバックアップベンダーを利用せずにバックアップを取っておきたいなら、ひとつひとつコピペで取得していくのも手じゃが。
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effort
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城宝 守
そんなのやってられません…

Teamsのリストアは課題がいっぱい

バックアップ博士
そうじゃろう?
また、2022年5月時点では、チームチャットでも以下のようにリストアがうまくできないケースが発生している。
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※2022年5月時点
Microsoft Teamsのリストアにおける課題
  • メッセージ投稿者がバックアップのサービスアカウント名に変更されてしまう
  • 投稿日時がリストア実行日になってしまう
  • 投稿順序やリストア場所が変更されてしまう
バックアップ博士
新規チャンネルにリストアしたり、Exchangeでバックアップしたりしたほうが管理しやすいが、ここは改善に期待じゃな。
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城宝 守
Microsoft 365のバックアップって大変なんですね…
バックアップ博士
だから、
バックアップベンダーの技術力が重要なんじゃ。
もちろんMicrosoftに限った話ではないぞ。ただAPI連携がとれているだけではなく、いかに深堀したデータバックアップができるかを見極めるんじゃ。
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製品選定ポイント② バックアップの保存先

バックアップ博士
続いての選定ポイント②は、『SaaSバックアップデータの保存先』じゃ。
守くん、SaaSバックアップはどんな方式が考えられるかな?
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城宝 守
C2D(Cloud to Disk)、C2C(Cloud to Cloud) でしょうか!
C2Cは大きくパブリッククラウド、バックアップベンダー独自クラウドから選べましたよね。
C2D (Cloud to Disk)
c2d
C2C (Cloud to Cloud)
c2c

C2Cの保存先

①パブリッククラウド

①パブリッククラウド
ベンダー名称ストレージ名称
AWSAmazon S3
Microsoft AzureAzure Blob Storage
Google Cloud PlatformGoogle Cloud Storage
IBM CloudIBM Cloud Object Storage
Alibaba CloudAlibaba Cloud Object Storage Service

②バックアップベンダー独自クラウド

②バックアップベンダー独自クラウド
ベンダー名称ストレージ名称
AcronisAcronis Cloud Storage
ArcserveArcserve UDP Cloud Hybrid/Direct
VeritasNetBackup Recovery Vault

パブリッククラウド/バックアップベンダー提供の独自クラウドのメリット・デメリット

バックアップ博士
ふむ。
ちなみにパブリッククラウドと独自クラウドを比較したときの違いはなんだったか、覚えておるかのう?
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城宝 守
パブリッククラウドの場合、データセンターが世界中に分布しているベンダーもあるため、自社にできるだけ近いところで、つまりデータの遅延を抑えながら、バックアップおよびリストアができます。
一方で、ストレージ料金だけでなくリストア時のダウンロードにも料金が発生してしまうデメリットがあります。構築をイチからしないといけないのも大変です。

パブリッククラウド

public_cloud1
public_cloud2
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城宝 守
逆に、
バックアップベンダーが提供する独自クラウドの場合、それほどデータセンターが多くはないため自社から遠い場所を選択しなければならないケースもありますが、遠い分災害対策としても有効で、多くはリストア時のダウンロード料金がかからず、準備もベンダー側がやってくれるので楽というメリットがあります!

バックアップベンダー独自クラウド

backup_vendor1
backup_vendor2
バックアップ博士
おお、よくできたの。
バックアップベンダー独自クラウドのメリットに関しては、『バックアップを少し学んだ人がみるサイト!vol.2』(独自クラウドへのバックアップ)でも詳しく解説しているから、よく復習しておくように。
自社に見合ったセレクトができるかどうかがポイントじゃな。
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バックアップとアーカイブの違い

バックアップ博士
加えて、バックアップだけでなく、アーカイブもできるかどうかも見ておくべきじゃ。
法規制やコンプライアンス的観点でいえば、1年から10年、場合によっては永久保存も必 要じゃからの。
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城宝 守
アーカイブ??
よく聞きますが、データのコピーを取ることですよね。いまいちバックアップとの違いがよくわかりません…
バックアップ博士
いい質問じゃ。
バックアップとアーカイブは、データの保管目的が異なるんじゃ。ここで簡単にそれぞれの違いを触れておこう。
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バックアップとアーカイブ

バックアップとアーカイブ、どちらも別の保存先にデータのコピーを保存することを指すが、それぞれデータ保管の目的が異なる。

バックアップ

日常的に利用しているデータの紛失や損失、破損などに備えてデータのコピーを別のメディアに保存すること。

b_a1
アーカイブ

利用頻度が低いが重要なデータのコピーを長期保管すること。訴訟などのコンプライアンス目的で保管するケースが多い。

b_a2
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城宝 守
なるほど!
データの保存先に加えて、保存先での保存期間の長さも要チェックってことですね。

製品選定ポイント③ 構築コスト

バックアップ博士
選定ポイント3つ目は、『バックアップ環境の構築コスト』じゃ。
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城宝 守
構築コストか…
バックアップ製品は大きくソフトウェア型とアプライアンス型がありましたよね。
ソフトウェア型
  • ソフトウェア以外のリソースをサイジングして別途用意する必要あり
  • 製品ごとにサポート先が異なり保守の切り分けが発生する
s_a1
アプライアンス型
  • メーカーによる最適な構成
  • メーカーによる一括サポート
s_a2
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城宝 守
ソフトウェアはサーバー、保存先を別途用意する必要がある分、オンプレミスとクラウド好きな場所に構築できる反面、ソフトとハードの保守の切り分けが発生するデメリットがありました。
一方アプライアンスは必要なリソースが一つにまとまっているので保守の切り分け不要で一括サポートしてくれるんですよね。その分構成によってはお高くなりますが…

詳しくは『バックアップを少し学んだ人が見るサイト!vol.2』(アプライアンスとは)を見てみてくださいね。

最近増えているBaaSは、SaaS型のバックアップサービス

バックアップ博士
それだけじゃないぞ。
最近はBaaSも増えてきておる。
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城宝 守
バース?
はじめて聞きました…
バックアップ博士
BaaS (Backup as a Service)は、
バックアップ機能をクラウド上で提供する、言わばSaaS型のバックアップサービスじゃ。
最近は、ベンダーがバックアップサーバー環境と保存先をクラウドサービスとして用意してくれるんじゃ。SaaSアカウントの情報だけ用意すれば、簡単にベンダー側でバックアップ環境を構築してくれるのはソフトウェア型でもアプライアンス型にもない大きなメリットじゃな。
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BaaS (Backup as a Service)

バックアップベンダー側でバックアップに必要なリソースをクラウド上で提供。サービスプロバイダーがサービス提供者となるパターンもあるが、ここでのBaaSは、バックアップベンダー提供サービスとする。

baas

簡単に管理するために必要なポイント

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城宝 守
“簡単” !
僕の大好きな言葉です。あとは…日本語ドキュメントは欲しいです!ゼッタイ。
これがあるだけでだいぶ構築時間の短縮になります。
日本語ドキュメント
doc1
英語ドキュメント
doc2
バックアップ博士
うむ、重要なポイントじゃな。
また、サポートが日本語対応しているかも大切じゃ。それも踏まえて、設定は簡単といえるか、ウィザードなどが表示されて順序もわかりやすいか、かかる時間はどのくらいか、あるいはバックアップソフト側のUIは統一されているかなども見ておきたいところじゃ。
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日本語サポート
ui1
かんたんウィザード
ui2

統一されたユーザーインターフェース

ui3
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城宝 守
特に、
バラバラにアプリケーションが含まれるMicrosoft 365はUIの統一性が必須ですね。

製品選定ポイント④ リストア機能

バックアップ博士
忘れてはいけない選定ポイントが、『リストア機能』じゃな。
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城宝 守
うーん、
選定ポイントいっぱいありますね…

データ丸ごと/アイテム単位、どっちで復元する?

バックアップ博士
当然じゃ。
自社に見合った製品を選ぶなら、多角的に製品を選ぶべきじゃからのう。リストアでまず大事なのが、『データの丸ごと復元か、アイテム単位か』という点じゃ。
SaaSデータが消える多くの理由としては、人為的ミスによるものも大きい。
例えばExchangeの場合、ひとつのメールを戻せばいいケースに対して、いちいちデータを丸ごと復元しなければならないようでは、利便性にかけるな。
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データ丸ごと復元

転送時のデータ容量が大きいため、復旧まで時間がかかる。

restore1
アイテム単位の復元

必要なアイテムのみ選択することで、転送時のデータ容量を抑えて復旧時間を早めることができる。

restore2
バックアップ博士
保存先がパブリッククラウドの場合、リストア時にデータ転送料金がかかるので、
アイテム単位でもバックアップできるとコストメリットが大きい。
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データ丸ごと復元

データ容量が大きいほどデータ転送料金がかかる。

restoration1
アイテム単位の復元

必要なアイテムのみ選択することで、データ転送料金を抑えることができる。

restoration2
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城宝 守
気づいたら大事なメールを消してたってこと、たまにあるからなあ。

リストア権限者はユーザー自身?管理者に限定?

バックアップ博士
データを戻す際、誰がリストアできるかという点も重要じゃ。ユーザー自身で戻せるのか、管理者しか戻せないのか、あるいはその両方か。
コンプライアンスの観点とユーザービリティの観点どちらもあるため、一概にどちらがいいとはいえない。自社に合った方を選ぶとよい。
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ユーザー自身で復旧可能

ユーザーにリストア権限を与えることで、ユーザーの好きなタイミングで素早く復旧可能。管理者の手間も低減。
ただし悪意あるユーザーにより、不正の証拠を消去されるリスクを伴う。

user

管理者でないと復旧不可

リストア権限を管理者に限定することで、悪意ある削除を防ぐことが可能。ただし、管理者へリストアの依頼がくるため、管理者に手間がかかってしまう。

master
バックアップ博士
ユーザー自身で戻せるようにする際は、UIが日本語対応しているかも確認しないといかん。管理者は英語に精通している場合でも、何人もいるユーザーが全員英語を話せるとは限らんからのう。きちんと読める日本語で対応していることが大切じゃ。
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netwark
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城宝 守
たまにツール翻訳をそのまま載せているような日本語GUIとかもありますからね。

データを復旧する際の検索機能

バックアップ博士
あとは、
忘れたらいけないのがデータ復旧における『検索機能』じゃな。そもそも検索機能はあるのか、キーワードだけでなく時間、送信者、添付ファイルの中身まで検索できるか、添付ファイルの形式を指定して検索できるか、Microsoft 365などの複数あるアプリケーションデータをまたがって検索できるのかなど、チェックすべき項目は多数ある。
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search
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城宝 守
検索機能がしっかりしていないと、もしもの際の対応にも遅れが出てしまいますしね。グーグルライクに検索可能か、なんかも大切そうです。
バックアップ博士
そう、
検索機能はRPO/RTOの達成にも大きくかかわる。
リカバリが数クリックで実現可能かもチェックするべきじゃな。
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製品選定ポイント⑤ ライセンス体系

バックアップ博士
いよいよ最後の選定ポイント、『ライセンス体系』じゃな。
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城宝 守
ここまで学べば、SaaSバックアップに適した製品を選べるんですね!
バックアップ博士
もちろん、SaaSバックアップだけを考慮すべきではないがな。
さて、ライセンスに関しては、やはりパーペチュアルなのか、あるいはサブスクリプションなのかは、まず気にすべきところじゃろう。

そのサブスクリプションが何年単位で用意されているかも重要じゃな。
たとえば、5年単位のサブスクリプションでも、一括購入が可能なのか、
もしくは1年単位で分割支払いできるのか、支払いの柔軟性があるとコストも管理しやすくなる
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5年一括購入
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1年単位で分割購入
graph2
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城宝 守
できるだけ安く済ませたいものです。
バックアップ博士
たとえば、
サブスクリプション期間が長くなれば割引率が大きくなるなどの手法をとっているベンダーもある。あるいは、ユーザーに付与されたライセンスを別のユーザーに付与できる体系もある。
仮に退職予定者がいたとしても、余計にコストをかけずに運用できるぞ。
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ch_license
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城宝 守
わかりました!
これでなんとか自社に見合ったSaaSバックアップ製品を選べそうです。
バックアップ博士
それはよかった。
SaaSに関しては、その便利さがゆえに、情シス部門の意図しないところでユーザーがどんどん新しいアプリケーションを導入してしまうという課題がある。その状況は、もちろんセキュリティ的にも、バックアップにかかるコスト的にも望ましくない。

ユーザーのリテラシーをできるだけ高めつつ、必要なSaaSに対して必要な分、安全にバックアップすることを心掛けるんじゃぞ。
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城宝 守
ありがとうございます博士!
それじゃあさっそく製品を見ていこうかな。

守くんとバックアップ博士の会話は参考になりましたか?
やっぱりSaaS上のデータは利用者責任でバックアップを取らないといけませんね。
「要件に一番当てはまる製品を選びたい」「とりあえずスモールスタートで始められる製品を提案してみたい」という方は、ぜひネットワールドまでご相談ください。エンドユーザー様に最適な製品をご提案するお手伝いをさせていただきます。

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