Schneider Electric (APC) UPSの選択方法
STEP1 バックアップする機器を確定する
システム障害時に停止させてしまうとビジネスへの影響範囲が大きいと思われるIT機器を優先的に選び、バックアップしなければならない機器の構成を検討します。サーバーをはじめ、ストレージやネットワーク機器などシステム全体を考慮する必要があります。
STEP2 バックアップする機器すべての最大定格電力のVA(ボルトアンペア)値と、W(ワット)値を入手する
電源保護対象機器の最大定格電力を付属の仕様書などから調べるか、またはメーカーへ直接問い合わせてください。いずれかの値のみの場合は、下記の方法でVA値とW値の両方を調べる必要があります。
機器の表示がVA値のみ:機器の力率を調べ、W値を算出します。「W = VA×力率」
機器の表示がW値のみ:機器の力率を調べVA値を算出します。「VA = W ÷ 力率」 ※コンピューター機器の力率は通常0.6~0.7となっています。ただし、負荷機器の仕様によって異なりますのでご注意ください。
- UPS選択に必要な用語解説
- 一般的な構成と比較した場合のコスト削減事例や電源障害時のリスク回避策など、分かりやすいイラストを用いながら「1システム1UPS」のメリットを4つの視点で詳しく解説。仮想環境やブレードサーバーなどに最適なUPSモデルも合わせて紹介します。
- ボルト・アンペア(VA)
機器の定格電圧(V)と定格電流(A)を乗じたもので、機器本体裏のラベルや取扱説明書などに記載されている定格電圧と定格電流を乗じて計算します。例えば、機器の定格電圧が100Vで定格電流が3Aの場合、100V×3Aでボルト・アンペアは300VAとなります。 - 消費電力(W)
機器本体の裏にラベルや取扱説明書、カタログなどに記載されている値です。 - 電源バックアップ時間
停電などの際にUPSのバッテリーで機器を動作させたい時間を指します。
- ボルト・アンペア(VA)
- 機器付属のラベル実例
- 機器の定格電圧、消費電力などは機器本体のラベルに記載されていることがあります。このラベルは次のように読み解きます。
50/60Hz
6/3A
100-127/200-240V
480W- 50Hz または 60Hz の電源周波数で動作します。
100V から 127V の範囲 または 200V から 240V の範囲の電源電圧で動作します。スイッチで 100V/200V 切替える必要がある機器、切替スイッチのない機器などがあります。 詳細は各機器の取扱説明書をご確認ください。 - ボルト・アンペアは 100V × 6A で 600VA となります。またはボルトアンペアを 200V × 3A として計算します。複数の機器がある場合、各機器のボルト・アンペアを足します。どちらで計算しても同じボルト・アンペアになります。 (これはボルトアンペアは常に一定となる特性のためです。)
- 消費電力はラベルに記載されている 480W となります。
定格電圧 AC100-120V 50/60Hz
定格電流 0.7A
消費電力 36W- 50Hz または 60Hz の電源周波数で動作します。
- 100V から 120V の範囲の電源電圧で動作します。
- ボルトアンペアは 100V×0.7Aで70VAとなります。
- 消費電力はラベルに記載されている36Wとなります。
周波数 50/60Hz
電圧 100V
電流 2A- 50Hz または 60Hzの電源周波数で動作します。
- 100V の電源電圧で動作します。
- ボルトアンペア(VA)は100V×2Aで200VAとなります。
- 本体裏のラベルや取扱説明書に消費電力の記載がない場合、機器の製造元、販売元に問い合わせます。
- 50Hz または 60Hz の電源周波数で動作します。
STEP3 UPSの定格容量を算出し、バックアップ時間を決める
バックアップする機器全体の最大定格電力値をSTEP2から算出します。必ず「最大のVA値の合計」および「最大のW値の合計」よりも大きい定格容量のUPSを選定する必要があります。また、バックアップするために必要な時間を事前に調べておき、バックアップ時間を決定します。
- 期待するバックアップ時間とは?
バックアップ時間は、システムの規模や担当の方のリテラシーによって異なりますが、期待するバックアップ時間に関しては右のような統計が出ています。10分以上が30%と一番多く、5分以上が19%、30分以上が16%という順になっています。バックアップにかかる時間を実際に測定し、必要な時間を割り出してください。
- 電源工事、自社で対応できない場合は?
- UPSを導入する場合、UPSが持っているインターフェースと設置する場所に備え付けられているコンセント形状が適合せず、分電盤を含めた電源工事が必要になる場合があります。お客様にて電源工事を手配いただくか、難しい場合は電源工事に関するサポートを実施していますので、ぜひご相談ください。
※APCのUPSでは、2.2kVA以上の製品でコンセントの形状が変わってきます。最大定格電力値から必要な機器を選択し、2.2kVA以上の製品が必要な場合、別途電源工事が必要となります。
バッテリーの切り替え時間は、UPSの給電方式によって変わります。
「常時商用(オフライン)方式」のUPSでは、万一の停電などによりバッテリーからの電源供給を行う際にバッテリーへの切り替えが生じる構造です。この切り替え時間は数ミリ秒を必要としており、この状態は「数ミリ秒の瞬間的な停電」と同じことを意味します。コンピューター機器の多くは数ミリ秒の瞬間的な停電ではそのまま動作を継続しますが、機器によってはこの数ミリ秒の瞬間的な停電により、停止や異常動作するものもあります。
そこで、UPSから電源供給を行う機器がどの程度瞬間的な停電に耐えるかを考慮する必要があります。機器がどの程度瞬間的な停電に耐えるか不明な機器の場合、「常時インバーター方式」のUPSを選択します。常時インバーター方式のUPSではバッテリーへの切り替え時間が生じません。
- 消費電力が不明な場合の算出方法
- 停電などの際に接続機器へ電源を供給するUPSは、各機器の消費電力の大きさによって選択されます。しかし、消費電力がどうしても不明な場合は、次の式で計算して値を求めることが可能です。
消費電力(W)=定格電圧(V)×定格電流(A)×機器に固有の力率 消費電力(W)=ボルト・アンペア(VA)×機器に固有の力率
計算には「定格電圧(V)」「定格電流(A)」「機器に固有の力率」の値が必要です。ただし、「機器に固有の力率」が不明で、消費電力の計算が難しいケースも多くみられます。 多くの場合、コンピューター機器の力率は0.6~0.7と言われています。しかし、実際の値よりも小さな力率で計算してしまうと、期待されるバックアップ時間よりも早くバッテリーが切れてしまいます。一概に力率を0.6~0.7として消費電力を計算するにはリスクがあるのです。逆に、力率の最大値である1.0で計算すればいいと考えがちですが、必要としている容量以上のUPSを選択することで、初期コストやバッテリー交換などの保守費用に大きく影響してしまうのです。
一概に力率を決めることは難しいものの、予算にゆとりがある場合は力率を1.0として、また、可能な限り安価なものを購入せざるを得ない場合は0.6~0.7で消費電力を計算しておきましょう。ただし、0.6や0.7が実際の力率よりも小さい場合、電源供給できる時間が短くなってしまう可能性があることは頭に入れておきましょう。 - 【参考】消費電力と力率ってなに?
- 電力とは電圧(V)と電流(A)を乗じたものになります。 交流電源の波形は次のようになります。 通常、電圧が生じたときに電流が流れますので、電圧、電流、電力の位相(個々の波の支点と終点)が一致しています。
髪を乾かすドライヤ等、抵抗のみの回路(ドライヤの回路の主成分は電熱線)で構成される機器は上にある波形となります。
コンデンサやトランスを含む電気回路では電圧と電流の位相がずれる現象が生じます。 コンデンサが含まれる電気回路の場合、電圧に対して電流の位相が遅れ、トランスが含まれる場合、逆に電流の位相が進む現象となります。 コンピュータ機器にはコンデンサやトランスが含まれいますので、電流の位相がずれます。 その結果、電力の波形も変化します、電力は電圧と電流を乗じて得られるためです。 次はコンデンサが含まれていた場合の波形の一例です。
実は電力波形と時間軸で作られる面積が消費電力となります。 コンデンサが含まれていない場合、含まれている場合の上の電力の波形を一緒に表示すると次のようになります。
いずれも同じ電圧、同じ電流から計算していますが、位相がことなるためそれらが描く電力波形は異なります。 二つの電力波形が作り出す面積は濃い緑の線の波形がつくる面積の方が小さくなっています。 この面積の比のことを力率と言います。
電圧と電流の位相がずれている場合、電圧の値、電流の値が同じでも、得られる電力量が異なります。 そこで電力に力率(電力の面積の比)を乗じて実際の電力、すなわち消費電力を計算します。